K::memo
2001年10月03日(水)
■ 村上 龍/
最後の家族(村上 龍)
父、母、兄、妹の4人家族。父は経営が危機に直面している会社に勤務する会社員。兄は、ひきこもり1年半。母は、その息子のためにカウンセリングに通いその関係で男と知り合う。妹は高校生で、元ひきこもりの男性と交際している。家族の構成員はなんらかの形で違和感がありながらも依存しあっている。それぞれの立場にたった章で物語が進んでいく。本書のテーマは、「ある組織に依存していると、その組織から出てひとりで生きていくというイメージが持てないし、よほどのインセンティブが無い限り出ようともしないものだが、それではどうしようもなくなる」という事だと思う。構造改革がいわれる世の中であっても、人情的に誰かに頼っていれば、何とかなるのではという気持ちが誰にでもある。しかし、本書には、その時が来れば本当に自分がひとりで生きていく気にならなければいけないという事が具体的に示されている。今後、日本の随所で起こるであろう状況をアナウンスし、それぞれの個人が自分自身どのように生きていく、あるいは、どう生きたいのかを考える契機を与えてくれる書物である。
2002年10月03日(木) パークライフ
■ 吉田修一/
パーク・ライフ(吉田 修一)
表題の「パークライフ」と「flowers」の2話が収録されている。どちらも舞台は東京。パークライフは、日比谷公園を中心としてまわるちょっと不思議だけど普通な小説。「flowers」は九州から東京に出てきた主人公の普通な小説。どちらも特に奇異な小説ではない。しかし、どちらの話しも主人公の見る景色や感じる情景の描写が生々しくかつ綺麗だ。「パークライフ」では公園での視点、「flowers」では生け花をいける場面での視点などがそうで、読んでいてビジュアルの描写に引き込まれた。物語は、上に普通の話と書いたが、われわれの世代からすれば、普通の感覚の展開という意味だ。普通の感覚の話を、綺麗に表現しているという点でもすごい小説だと感じた。本作は今年の芥川賞受賞作である。
2003年10月03日(金) いい天気で眠い
■ 吉村萬壱/
ハリガネムシ(吉村 萬壱)
堕ちていく高校教師の物語。倫理の教師である主人公の中にある暴力性が露になっていく。読みやすい文体だけど表現がちょっと生々しく、気持ちのいい内容ではない。裏にもう少し深い主旨があるのかもしれないけど、読み取れなかった。