K::memo
2003年12月03日(水) 靫公園の東側
■ 島本慈子/
ルポ解雇―この国でいま起きていること (岩波新書 新赤版 (859))(島本 慈子)
2003年6月に改正労働基準法(解雇ルール)が成立した。本書ではこの法律の成立までの過程と、不当解雇の実態、労働裁判、パート雇用についてルポ形式で書かれている。事実を知るという意味と、知識を得るという意味で有用な1冊だと感じた。
閣議決定を経て5月に国会に提出された法案の解雇ルールは次の内容であったと書かれている。
使用者は、この法律又は法律の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇する事ができる。 ただし、その解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
ここで問題点は、この文章を素直に読めば労働者側に主張立証責任があるようにとられるという点である。ケースとして最も多いグレーゾーン(立証が難しいケース)の場合、立証責任のある労働者側が負ける事になる。最終的に、与野党の反対により「ただし」より前の文章が削除された。このような使用者側の法案が提案され閣議決定された裏には、日経連の「新時代の日本的経営」に示されるような労働者を少数の長期雇用者と多数の有期雇用者に分けて、雇用調整をやりやすくする経営方法を実現していくという目的があるという。
不当解雇についても実態を紹介している。経営上の問題や組合潰しのための解雇を、「不正を行った」などの、でっち上げの理由をつけてやめさせるケースが多いようだ。「過去に犯罪を犯した等の汚名をおしつけられた時に、犯罪を行っていないという事を証明するのは難しい。」という事を知って驚いた。全くのでっちあげの事件を無いと証明するのは相当に困難なようだ。また、労働裁判での判定についても、再任拒否を含む裁判官の最高裁への迎合という問題もあるらしい。
この本を1冊読んだだけでは歴史的な経緯など、わからない点もあるけど、右肩あがりの成長をは進めてきた経済団体と政治家の今後の方向性というのが見える。本書に書かれているのだが、今のアメリカの所得は上位1%>下位90%合計らしい。この方向を目指しているような感じがする。例えばこの状態になって経済的に成長していっても、社会としてどうなんだろうと思ってしまう。