K::memo
2002年02月01日(金)
■ 村上 龍/
だまされないために、わたしは経済を学んだ―村上龍Weekly Report(村上 龍)
メールマガジンJMMに掲載されている著者のエッセイをもとにした本。 JMMは主に経済について、分かっている事と分からない事を明確にした上で、問題点を考えようというメディアである。ニュースを見ていても、出演者・番組作成者を含めて分からない事をぼかして、分かっている範囲で視聴者を啓蒙しようとする姿勢がある。こういう姿勢では本当の問題点はうやむやになってしまうだろう。 JMMはそういう姿勢を排除し根本的な問題点の分析と、解決策を考える材料の提示を行うという姿勢に基づいている。
本書では、さまざまな面で2極分化が進んでいるという。 例えば、天下りをして国家的に職が確保されている人と、ハローワークに通い続けている人。 すこし前まではこのような事が無かったのかといえば、そうではない。以前から天下りはあっただろうし、富める人と貧しい人は存在した。それが極端に分かれてきたということだろう。しかし、2極分化は悪い事でも良い事でもないだろう。それが日本の現実だというだけだ。何が悪いのかというのは、そういう事実がアナウンスされていないという事だ。アナウンスされなくても、現実にこういう状態になってくると不安を抱える側の人にとっては深刻だろう。新聞でも50〜60代の男性の自殺が急増しているという事が報道されていた。この世代の男性の自殺が全て同じ理由とは考えないが、このような不安に基づいている人もいるだろう。2極分化しているにも係わらず、以前と同じように中流意識のもとで平等だと勘違いしているから、曖昧な不安にとらわれているのかもしれない。
経済とは、コスト・ベネフィット・リスクを考える事によって社会をよりよくしていこうとする行為である。選択は、個人の活動に委ねられている。経済を学ぶということは、自分の将来を考えるということだろう。
2002年02月08日(金)
■ 村上 龍 /
収縮する世界、閉塞する日本―POST SEPTEMBER ELEVENTH(村上 龍)
9月11日のテロに関する4つの対談、座談がおさめられている。それぞれの対談は10月から11月に行われたものである。
最初は、米・英・独のジャーナリストとの対談。テロに対してそれぞれの政府やマスコミがどう反応したか。2番目は、アフガニスタン・カブールで国連高等弁務官事務所所長をされている山本氏との対談。山本氏はカブールノートで知られているように、アフガニスタンの現場としての現状にも詳しい。テロの前と後の状況について述べられている。3番目は、JMMにも投稿されている北野氏を交えた対談。「グローバリゼーションとの相克」と題してイスラムの経済的な問題について述べられている。最後は、中東について研究されている小杉教授との対談。イスラムからみた西側とその関係について述べられている。
全体を通して感じられるのは、日本のマスコミを通したイスラムに関する情報が偏っているということだ。この本にある対談で語られているイスラムとのギャップがある。そういう意味でも、事実を知るひとつの手がかりになる1冊である。
2002年02月09日(土)
■ 村上 龍 /
eメールの達人になる(村上 龍)
著者によるメールの書き方、気をつける点が述べられている。主旨は、相手の負担になるよう書き方をしない事と、文章のイメージを大切にする事だとある。 確かに、メールはface to face以上に感情が伝わるようなところがある。行間にある意思を想像してしまうからかもしれない。
この本を読んでからメールを書くときに注意しているのだが、相手に負担をかけない文脈というのは難しい。「〜していただくと助かります」という文章は使いやすく、便利な言いまわしだと思う。
2002年02月11日(月)
■ 岩波書店辞典編集部 編/
ことわざの知恵 (岩波新書 新赤版 (別冊7))(岩波書店辞典編集部)
「岩波ことわざ辞典」を刊行した編集部による、ことわざにまつわる160のトピックが集められている。
それぞれのことわざに関して、現在どういう風に誤解されて使われているかとか、こういう解釈がされているという説明もある。おもしろのは、そういう誤解に対して否定的ではなく肯定的に書かれている点だ。本当の意味を知りつつ、そういう風に誤解される背景自体に時代の世相のようなものがあるようだ。
香山リカさんのメールマガジンでこの本を知り読んだのだが、カウンセリングでことわざを使えば効果的な場面があるらしい。確かに、この本を読んで、教訓が凝縮されたようなことわざもあり、興味深く読むことができた。
2002年02月15日(金)
■ 玄田有史/
仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在(玄田 有史)
若年層がかかえる仕事に対する、もやもやとした不安に対して解説している。データを多数使用し説得力のある構成となっている。
フリーターや離職する人、就職できない人が増えたのは、中高年(この本では45歳以上)の社員数が増えてきている為としている。定年延長やリストラ反対がいわれるなかで、このような意見は辛辣だ。 いわゆる団塊の世代が60歳の定年を迎える2007年頃には定年延長が強く言われるになり、さらに若年層が就職難になるとされている。また、中高年社員が増え若年層が入社してこないため、40歳までの社員が週60時間以上の労働をしている事が問題と報告している。さらに悲惨な事に、仕事が多すぎるために職能に関する勉強をする機会が減っていっているらしい。(昔はのんびりしていた、なんて話はよく聞く話だ。)で、就職難で希望の就職ができない上、このような過多な労働で離職する若年層が増えるという構造らしい。
私のまわりの人は、みんなこんな状況だ。離職する人も多い。そして、これもこの本に書いてあるが、私たち第2次ベビーブーム世代は、就職で苦労し、就職しても役職不足、あげく転職する時も苦労するという世代らしいです。フリーターや仕事につかない人を非難するような世論があるけど、こういう悪循環が裏にあるという事を知るという事が大切だと思う。 この本を読んで実践してみようと思うのが、仕事に関する曖昧な表現を排除するということだ。例えば、「〜を頑張る」、「忙しい」、「普通は〜」など。こういう表現を排除することによって仕事に対する曖昧さがなくなり、目的意識や問題点がはっきりする。
2002年02月22日(金)
■ 糸井重里/
ほぼ日刊イトイ新聞の本(糸井 重里)
著者が主催するウェブ「ほぼ日刊イトイ新聞」の成立から現在・未来までが解説されている。また、このウェブを始めた頃から著者の中で仕事について考え方が変わっていく様が書かれている。このウェブが現在のように、この分野でのデファクトスタンダードを取得するまでの、作成チームの様子についても書かれている。チームの人たちが「多忙は怠惰の隠れ蓑」という著者の言葉通り、常に何が自分たちのやろうとしている事にあっているのかを考えているところがすばらしい。
高度経済成長に確立されバブルの頃に最も高まったと思われる、「大量生産、大量消費」社会に疑問を示すと同時に、今後の仕事のあり方や、生活のあり方が示されている。著者たちも、青山の事務所から離れ、一軒家に引越し自分たちでできる事をやるというスタンスにたってウェブを作っていっている。今後、グローバル経済が押し進められますます大量消費へ向かう経済と、著者が示すように、地域のコミュニティを大切にし非消費社会へ向かう経済の対立が起こっていくのだと思う。どちらが、今後のスタンダードとなるかという話とは別に、自分たちのできる範囲で出来る事を最大限活用していく経済の方が幸せになれる人が多い気がする。